【相談内容】
60代の男性、M様。趣味のサーフィン中に波に巻かれ、頭から海底に落ちてしまうという事故により「胸椎圧迫骨折」を負われました。
病院での診断後、3ヶ月間にわたりコルセットで体幹を固定。懸命なリハビリの結果、骨折自体は無事に癒合(ゆごう)したものの、本当の悩みはここからでした。
「骨はくっついたと言われたのに、少し下を向くだけで背中がズキッと痛むんです」
日常生活でスマートフォンを操作する際、わずかに頭を下げた状態が続くと背中の痛みが強まり、大好きな趣味の再開も不安な日々を過ごされていました。
主訴:下を向いた時の背中(胸椎付近)の痛み
随伴症状:背部筋肉の慢性的な強張り、可動域の制限
【中医学的分析】
中医学では、M様の状態を以下のように分析しました。
- 瘀血(おけつ)外傷(骨折)によって組織が損傷し、血の流れが滞った状態です。「通ぜざれば則ち痛む」という言葉通り、血の巡りが悪い場所には痛みが生じやすくなります。
- 気滞(きたい)3ヶ月間のコルセット固定により、本来動くべき筋肉や関節が動かせなかったことで、エネルギー(気)の巡りが停滞してしまった状態です。
- 筋失濡養(きんしつじゅよう)「筋肉に栄養が行き渡っていない」状態を指します。長期間の固定と血流不足により、筋肉が柔軟性を失い、スマホ操作のような微細な姿勢維持にも耐えられなくなっていました。
【治療】
- 患部への灸頭鍼(きゅうとうしん)骨折部位周辺を触診すると、深い部分に強い硬直がありました。ここに鍼を刺し、その上でモグサを燃やす「灸頭鍼」を施します。温熱効果により、深部の「瘀血」を溶かし出し、筋肉の柔軟性を一気に高めます。
- 背部一行(はいぶいちぎょう)の経穴使用背骨のすぐ横を通るツボのラインを刺激します。ここは脊髄神経とも密接に関わる場所で、背骨全体の血流を改善し、姿勢を支える支持力を回復させる狙いがあります。
- 遠隔部位による気血の調整背中だけでなく、手足にある「血」の巡りを司るツボ(膈兪や血海など)も併用。全身のバランスを整え、患部への負担を軽減させました。
【経過】
- 1回目〜3回目の治療週に1回のペースで来院。治療を重ねるごとに、背中の「突っ張り感」が抜けていくのを実感。
- 5回目の治療これまで数分で痛みが出ていたスマートフォンの操作が、長時間になっても全く気にならない状態まで回復。
- 今後の予定非常に良好な経過のため、次回は2週間後のメンテナンスとし、そこで症状がなければ治療終了となります。
【まとめ】
「骨は治ったのに痛みが取れない」というケースは、実は少なくありません。それは骨の問題ではなく、周囲の筋肉の硬直や血流の滞り(瘀血)が原因となっているからです。
M様は、痛みが治まったことで「今度お友達とサーフィンを一緒にする予定を立てました!」と、明るい笑顔で教えてくださいました。
もし、怪我の後の長引く痛みで「もう元のようには動けないのかも…」と諦めかけているのなら、ぜひ一度ご相談ください。中医学の知恵で、あなたの「やりたいこと」を再び支えるお手伝いをいたします。
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