【相談内容】
70代の男性から「2ヶ月前から左肩が痛んで動かせない」という切実なご相談をいただきました。
きっかけは、ご家族の介護でした。その際に左肩を痛めてしまい、近くの整形外科を受診。レントゲンなどの検査では「関節に異常はなし」との診断でした。医師からは「固まらないように動かさないといけない」と指導されたものの、あまりの痛さに自力ではどうしても動かすことができない状態が続いていました。
「このままでは肩が動かなくなってしまうのではないか……。まずは鍼灸でこの痛みを少しでも軽くして、リハビリができる状態にしてほしい」という藁をもすがる思いで当院を来院されました。
- 主訴:左肩の激しい痛み、運動制限(痛みのせいで肩を上げたり回したりできない)
- 随伴症状:左肩まわりの筋肉の萎縮(2ヶ月間動かせなかったことによる筋力低下)、左首すじから肩にかけての強い緊張
【中医学的分析】
中医学では、このように身体を痛めたことで起こる急性の肩の痛みを「傷筋(しょうきん)」や、気や血の流れが滞る「気滞血瘀(きたいけつお)」という状態として捉えます。
- 気滞血瘀(きたいけつお):ストレスや過度な負担(介護など)によって、身体のエネルギーである「気」や、栄養を運ぶ「血(けつ)」の流れが急激に滞ってしまった状態です。中医学には「不通則痛(通じざれば則ち痛む)」という言葉があり、流れが詰まった場所に激しい痛みが引き起こされます。
- 経絡の滞り:今回の痛みの中心は、肩の後ろから首にかけてを通る「手太陽小腸経(てたいようしょうちょうけい)」や「手少陽三焦経(てしょうようさんしょうけい)」というル経路の滞りが原因であると考えました。
【治療内容】
①初診時の局所への治療
まずは最も強い痛みを緩和させるため、左の首すじや肩の局所(最も硬くなっているポイント)を中心に鍼治療を行いました。さらに、治療効果を長持ちさせるために、微小な鍼がついたシール(皮内鍼)を患部に貼って初診は終了しました。
②:痛みの「戻り」に対する治療の見直し
初診直後は痛みが劇的に取れ、肩もスムーズに動かせるようになりましたが、2回目の来院時には痛みが元に戻ってしまっていました。その後、数回にわたりアプローチを変えながら治療を続けましたが、一進一退の状態が続きました。
③:肩甲骨の連動性を高める治療
そこで6回目の治療時、肩の関節そのものだけでなく、肩の動きの土台となる「肩甲骨の可動性」に着目しました。肩甲骨まわりの重要なツボを刺激し、肩甲骨が本来の正しい動きを取り戻せるよう治療を行いました。
【経過】
初診
左首・肩への施術により、直後から痛みが大幅に軽減。その場で肩が動かせるようになり、順調なスタートに見えました。
2回目〜5回目
数日経つと痛みが戻ってしまい、施術法を試行錯誤する期間が続きました。効果が今ひとつ上がらず、もどかしい状態が続きます。
6回目
視点を変え、肩甲骨の動きを徹底的に良くする治療へと切り替えたところ、これが劇的な効果を発揮。施術後、痛みが大幅に軽減しました。
現在(7回目以降)
前回劇的に改善して以降、恐れていた「痛みの戻り」が一切なくなりました。現在は、長年動かせなかったことによる最後の引っかかりを解消する「あと一歩」の段階まで来ています。
【まとめ】
今回の症例のように、長期間(2ヶ月間)も痛みで肩を動かせずにいると、使われなくなった肩まわりの筋肉は徐々に痩せて(萎縮して)しまいます。しかし、痛みの根本的な原因(今回は肩甲骨の動きのロック)を解消し、正しく肩を動かせるようになれば、筋肉は必ず元に戻っていきます。
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