【相談内容】
もともと全身の冷えを感じやすい体質だが、今年に入ってから冷えが急激に悪化。
特に「胃から口の中にかけて、冷気がスーッと昇ってくるような感覚」が強く現れるようになり、不快感と辛さから来院。
真夏であってもお腹周りや足元の冷えが酷く、腹巻きやレッグウォーマーが手放せない状態。また、生野菜(キュウリなど)や冷たい飲食をとると、直後から胃や口元の冷え感が一層強くなる傾向がある。
主訴:胃から口の中へ冷えが昇ってくる感覚、全身および下半身(お臍から下)の深刻な冷え
随伴症状:腰椎椎間板ヘルニアによる腰の痛み・重だるさ、胃腸の冷え感
【中医学的分析】
舌・脈・腹部の診察を行ったところ、舌苔の性状や脈の弱さ、お臍周りの冷えから、根本的な病態は「脾腎陽虚(ひじんようきょ)」および冷えの逆流である「陰寒上逆(いんかんじょうぎゃく)」と見立てました。
①脾胃の陽気不足(ひいのようきふそく)
中医学において「脾胃」は消化吸収を司り、食べたものを熱エネルギーに変えるボイラーのような役割を果たします。ここの働き(陽気)が弱っているため、キュウリなどの冷涼性の食材や冷たい飲食物によって胃腸がすぐに冷え切ってしまいます。
②腎陽虚(じんようきょ)
「腎」は生命エネルギーの根源であり、全身を温める「根本の火種(命門の火)」を宿しています。腎の温める力(陽気)が不足すると、お臍から下の下半身を中心に強い冷えが生じます。
③陰寒上逆(いんかんじょうぎゃく)
下腹部や胃腸に冷え(陰寒)が溜まりすぎると、本来下へ巡るべき気や熱のバランスが崩れ、冷気の塊が上部(胃から口の中)へと突き上げてくる特有の症状を引き起こします。
【治療】
治療の目的は、芯から冷え切った「脾胃」と「腎」の陽気を補い、全身を内側から温めて冷えの逆流を鎮めることです。
1. 脾胃を温め、消化機能を助ける施術
お腹のみぞおち付近にある「中脘」と、胃腸の働きを活性化させる「足三里」に温灸・鍼施術を実施。胃腸の陽気を底上げし、飲食物による冷えの影響を受けにくい土台を作る。
2. 腎の陽気を補い、下半身の熱源を養う施術
お臍の下に位置する「気海」「関元」へ施灸し、冷え切った下腹部に直接温熱刺激を届けます。さらに足首の「太渓」を使って腎の働きをサポートし、下半身全体の血流と気の巡りを改善する。
3. 腰椎椎間板ヘルニアへのアプローチ
腰背部の硬結や圧迫ストレスを緩和するため、腰部・臀部のツボに適度な刺鍼を行い、気血の鬱滞を取り除いて冷えと痛みの悪循環を断ち切る。
【経過】
初回〜3回目
施術直後はお腹や足先まで温かさを実感されるものの、数日経つと胃や口元の冷え感がぶり返す状態。日常の保温ケアと併せて治療を継続。
4回〜6回目
お臍から下の重だるい冷えが徐々に和らぎ始め、真夏用の防寒具(腹巻き・レッグウォーマー)の使用頻度が少しずつ減る。
8回目
「胃から口の中へ冷えが昇ってくる感覚」がほとんど消失。冷たい感覚に悩まされずに日常生活を過ごせるレベルまで改善。
現在
口の中の冷え症状は落ち着いており、現在は持病である腰椎椎間板ヘルニアのケアと、冷えのぶり返しを防ぐ体質改善(メンテナンス)を兼ねて、週1回のペースで通院を継続中。
【まとめ】
胃から口元へ冷えが昇ってくるような感覚は、「冷えが体の奥深くに溜まり、巡りが乱れているサイン」です。手足の先だけでなく、お腹や内臓そのものが冷えている場合、外側から温めるだけでは改善に時間がかかることがあります。
生野菜(キュウリ・トマトなど)や冷たい飲料の過剰摂取は控え、加熱調理した根菜類やスープ類を中心に胃腸をいたわりましょう。
「ただの手足の冷えとは違う」「胃の奥から冷たい感じがする」といったお悩みも、中医学的なアプローチで内臓の働きを整えることで改善が目指せます。同じような症状でお困りの方は、我慢せずお気軽にご相談ください。
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