【相談内容】
70代の女性から「1ヶ月ほど前から左腕が重だるくなり、最近では痺れ(しびれ)まで出てきた」とご相談をいただきました。
日常生活でも、洗濯物を干すときや棚のものを取るときなど、家事の最中に左腕を挙げるのが辛く、大変不自由な思いをされていました。心配になって整形外科を受診されたそうですが、レントゲンなどの検査では「頸椎(首の骨)に異常は見られない」との診断。処方された湿布薬を貼って様子を見ていたものの症状は変わらず、医師から鍼灸治療を勧められて当院にご来院されました。
- 主訴: 左腕の重だるさ、左腕の痺れ(しびれ)
- 随伴症状: 左腕の挙上困難(腕を上に挙げると辛い)、首から背中・肩にかけての強い筋肉の緊張、局所の冷え
【中医学的分析】
中医学では、このように筋肉が過度に緊張し、血行が滞ることで痛みや痺れ、重だるさが生じる状態を「痺症(ひしょう)」や「気滞血瘀(きたいけつお)」と捉えます。
- 気滞血瘀(きたいけつお): ストレスや疲労、姿勢の崩れなどによって身体のエネルギー(気)の巡りが悪くなり(気滞)、それに伴って血液(血)の流れも滞ってしまった状態(血瘀)を指します。「通じざれば則ち痛む」という言葉通り、血液が巡らないことで筋肉が栄養されず、強い凝りや痺れ、重だるさが引き起こされます。
- 寒湿(かんしつ)の関与: お身体を拝見すると、特に左肩甲骨から肩の後面にかけての筋肉がガチガチに硬くなっているだけでなく、手で触れると明らかな「冷え」が感じられました。寒さ(寒邪)は筋肉を縮こまらせ、巡りをさらに悪化させる性質があります。
首から肩、そして腕へとつながる経絡(エネルギーや血液の通り道)が冷えと凝りによってブロックされ、神経や筋肉への栄養が途絶えてしまったことが、今回の痺れと重だるさの根本原因と考えられました。
【治療】
お身体の状態に合わせ、滞った血流を促し、奥深くの冷えを根本から温めるためのアプローチを行いました。
1. 灸頭鍼(きゅうとうしん)による深部の温熱・弛緩
特に凝りと冷えが顕著だった「左肩甲骨から肩の後面」のツボ(天宗や肩貞など)を中心に鍼を打ち、その鍼の頭に丸めたお灸をつけて火を灯す「灸頭鍼(きゅうとうしん)」を施しました。鍼の刺激でピンポイントに筋肉の緊張を緩めつつ、お灸の輻射熱によって皮膚の表面だけでなく、筋肉の奥深くまで心地よい温熱を届け、こびりついた「冷え」を追い出します。
2. 首・背中(経絡)の緊張緩和
首から背中にかけて、腕へとつながる経絡(足の太陽膀胱経や手の太陽小腸経など)上の重要ルートを優しく、かつ的確に刺激しました。これにより、首肩全体の筋肉のロックを解除し、腕へと流れる血液の「通り道」を広げていきます。
【経過】
初診:
首から肩の緊張を丁寧に緩め、灸頭鍼でじっくりと温めたところ、治療直後から「左腕の重だるさと痺れがかなり軽くなった」と、その場で効果を実感していただけました。
2診目〜3診目:
回を重ねるごとに、ガチガチだった首や肩甲骨周りの筋肉が本来の柔らかさを取り戻していきました。家事の最中に左腕を挙げる動作も、徐々にスムーズになっていきました。
4診目:
合計4回の治療を終えた時点で、「腕の重だるさも痺れも、すっかり消えました!」と嬉しいご報告をいただきました。洗濯物干しなどの日常の家事もストレスなく行えるようになり、ご本人の表情も大変明るくなられました。経過が非常に良好なため、今回で一度治療を終了といたしました。
【まとめ】
今回は、首や肩の筋肉が極限まで硬くなり、さらにそこに「冷え」が加わったことで、腕にいく神経や血管が圧迫されて起きた痺れ・重だるさの症例でした。比較的早い段階でご来院いただけたことも、4回という短期間でのスピード改善につながった大きな要因です。
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