【相談内容】
もともとは頑固な首肩のこりや腰痛の治療で定期的に通院されていた患者様です。
施術を重ねることで首肩や腰の症状が順調に改善し、お身体が随分と楽になってきた頃、「実は、以前から副鼻腔炎にも悩まされていて……」とご相談をいただきました。
特に辛いのが、鼻水が喉の奥へと垂れて落ちてくる「後鼻漏(こうびろう)」による激しい咳込みと、常に喉の奥へ痰がへばりついて取れないような不快感でした。日常会話や就寝時にも咳き込んでしまい、息苦しさと喉の違和感に悩まされていました。
主訴:副鼻腔炎による後鼻漏(鼻水が喉に落ちる)、それに伴う激しい咳込み、喉に痰が張り付く感覚
随伴症状:首肩の凝り、腰痛(施術により改善傾向)、足元の冷え、上半身ののぼせ感
【中医学的分析】
診察(脈や舌、お腹の状態など)を行ったところ、上半身に余分な熱がこもる一方で、下半身は冷え切っている「上熱下寒(じょうねつげかん)」の状態であることが分かりました。
①上熱下寒(じょうねつげかん)
本来であれば全身を巡るべき熱エネルギー(陽気)の循環が滞り、頭や顔面部などの上半身に熱が昇り、お腹や足元など下半身が冷えてしまう状態です。
②熱邪(ねつじゃ)と痰湿(たんしつ)の停滞
上半身に昇った熱が鼻や喉の潤いを煮詰めてしまい、粘り気のある「痰(たん)」へと変化させます。これが副鼻腔や咽頭に停滞することで、後鼻漏やしつこい咳込みを引き起こしていました。
③気血の巡りの停滞(首肩の凝り)
首や肩の緊張が強いと、頭部への血液循環や気の巡りが塞き止められ、熱がさらに頭部にこもりやすくなります。
根本的な改善には、まず下半身を温めて熱のアンバランスを整えつつ、首肩の巡りを解放し、喉や鼻にこもった「熱」をしっかりと冷まして取り除く(清熱する)アプローチが必要と判断しました。
【治療】
身体全体の熱循環を整えながら、鼻・喉の炎症を鎮めるため、以下の施術を行いました。
1. 下半身の温補(お腹・足元の施術)
まずは冷え切った下半身を温めるため、お腹や足にあるツボに温灸や鍼を用いて温めました。下半身を温めることで、上半身に昇りすぎた熱を足元へと引き下げ、全身の「上熱下寒」のバランスを正常に戻す。
2. 頚部・肩の循環改善
首の後ろにある「風池(ふうち)」や「天柱(てんちゅう)」といったツボに鍼を施し、深部の筋緊張を緩め、頭部へ繋がる気血の通り道を拓くことで、頭部に鬱滞していた熱の逃げ道を作る。
3. 熱を冷まし咳を鎮める「火鍼」施術
仕上げとして、首の付け根にある「大椎(だいつい)」というツボに対し、火鍼(かしん:鍼の先端を熱して瞬時にツボを刺激する中医学の伝統手技)を用いました。
大椎穴は全身の熱のバランスを調整し、肺や気管支の働きを整える代表的なツボです。火鍼を用いることで強い「清熱作用(余分な熱を散らす働き)」と「止咳作用(咳を鎮める働き)」を促し、炎症を素早く鎮静化させました。
【経過】
初診時
後鼻漏による咳込みと喉の張り付き感が強く、日常的にも強いストレスを感じている状態。上記の一連の施術(温補+風池・天柱への鍼+大椎への火鍼)を実施。
2回目
来院されるなり、「前回の治療後から咳込みと喉の痰の絡みが、以前の半分以下まで激減しました」と大変嬉しいご報告をいただきました。就寝時の咳込みも格段に減り、呼吸も楽になったとのことです。
今後の方針
非常に高い治療効果が確認できたため、お身体の巡りを安定させる目的で次回は2週間後に施術を予定。体調や季節変化を見極めながら、再発しにくい体質づくりを継続してサポートしていきます。
【まとめ】
副鼻腔炎や後鼻漏による咳・痰のトラブルは、局所の問題だけでなく「身体の上下の温度差(冷えのぼせ)」や「首肩の緊張による巡りの悪さ」が深く関わっているケースが多々あります。
今回用いた「大椎穴への火鍼」は、過去に副鼻腔炎や長引く咳で悩まれていた複数の患者様にも非常に高い改善効果が見られた、再現性の高い中医学的なアプローチの一つです。
「耳鼻科でお薬を続けているけれど、喉の奥の不快感や咳がすっきり治まらない」
「鼻水が喉に流れてきて、痰がずっと張り付いている」
このようなお悩みをお持ちの方は、局所だけでなくお身体全体のバランスから整える中医学の鍼灸治療をぜひ一度ご相談ください。
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